秋葉もレシュテイが食べたかった。レシュテイとは、じゃがいもをフライパンにパンケーキのように引き、カリカリに焼いた料理だ。

しかし、ここで「私もレシュテイにする!」と言ってはいけないのだ。みんなそれぞれ違うものを頼んでいる。みんなで一口を交換し合うためだ。

「秋葉はどうするの?」

レシュテイを注文した友達が秋葉に訊ねる。秋葉は「えっと……」と迷った。みんなとかぶらないものを選ばなくてはならない。

「秋葉!!自分の意見をきちんと言え!!」

カフェテラスの奥から怒声が響く。秋葉だけでなく、みんながそちらを見ていた。

カフェテラスの奥、つり目の切り揃えられた茶髪の男子が秋葉を睨んでいた。

男子の周りには、誰も座っていない。まるでその男子を避けているかのようだ。

「えっと……私……」

秋葉は男子と友達を交互に見つめる。そして、ゆっくりと口を開いた。

「私、ラクレットにする」

その刹那、男子はため息をつく。何あれ、と言いたげな目を友達は向けていた。