新たな楽しみが増えて史菜がご機嫌でいると、玲人が隣に来て、食事について話をした。

「ここの飲食店のメニューを知っている?」
「知らない。見たの?」
「うん。いろいろあるんだよ」

 前日にインターネットで検索したことを付け加える。
 どんなものがあるのか興味を示したので、玲人は気持ち良さそうに泳ぐ魚達を見ながら教えた。

「実はね・・・・・・」

 玲人がこっそり史菜に耳打ちをする。

「レストランのメニューはここの魚達を食材として扱っているんだよ」

 それを聞かされた史菜は一瞬にして全身が凍りついた。

「そ、そんなの嘘だよ!」
「本当」
「し、信じない!」
「ふーん・・・・・・」

 意味ありげに笑う玲人を見て、史菜は水槽に視線を戻す。

「じゃあ、さっき俺が教えたものの中でどれでも食べることができるよね?」
「そりゃあ、も、もちろん・・・・・・」

 口では言ったものの、あんなことを聞かされた後では注文することなんてできない。
 三十後、レストランで席に着いて、史菜はメニューと睨めっこしていて、その間に玲人はすでに食べたいものを決めた。

「・・・・・・まだ?」
「ちょっと待って」
「そんなに迷うんだったら、食べたいものを全部注文すれば?」
「お腹を壊すよ!」

 ページを何度も捲っては唸る史菜が面白くて、玲人はテーブルを指で叩き続ける。
 数分後に決めたものはミートスパゲティ。
 玲人が決めた海の幸フライ定食と一緒に店員に伝えた。
 もしも、玲人から話を聞いていなかったら、シーフードドリアを注文していた。