◇
チリンチリンチリン……
危うく、後ろから走ってきた自転車にぶつかりそうになってしまった。危機一髪のところで避けたからよかったものの。
ああ私ったら馬鹿だなあ、こんなに浮かれてしまっている。
今日は待ちに待った土曜日。郁也とデートの日。
浮かれすぎて、予定よりも随分と早く集合場所についてしまった。
いつもは、あのことを思い出してしまうから、待つのはあんまり好きじゃないんだけど。
「あれ? 林檎?」
そう声をかけられて、ふと顔を上げた。
そこにいたのは、さっき通り過ぎたはずの自転車に乗った、雄也だった。
「雄也?!」
「すげえ偶然!」
「いきなり話しかけられたからビックリしたよ」
雄也は、ダメージジーンズにTシャツにネックレスというラフな格好をしていた。でも、それだけでもカッコよく見えてしまう。顔が整ってるって得だよなーなんて思ったりして。
「今から誰かと遊ぶの?」
「俺? いや。ブラブラしよーと思ってさ。暇だし、DVD借りてから郁也の家にでも行こうかなーなんて」
そう笑うから、なんだか言いにくい。今から、郁也がここに来ること。
「ああ、えっと、たぶんいないよ、郁也」
「え、なんで? あ、もしかして今から郁也とデートだった?」
その言葉に、顔を赤くした私を見て、雄也は笑った。
「なんだ、そっか。どこ行くの?」
「映画かなあ……」
「へえ、いいじゃん。郁也はまだ?」
「私が予定より早く来すぎちゃったから」
「……林檎はさ、郁也のどこが好きなの?」
私が少し雄也から視線を外した隙に、雄也の声のトーンが落ちた。
チリンチリンチリン……
危うく、後ろから走ってきた自転車にぶつかりそうになってしまった。危機一髪のところで避けたからよかったものの。
ああ私ったら馬鹿だなあ、こんなに浮かれてしまっている。
今日は待ちに待った土曜日。郁也とデートの日。
浮かれすぎて、予定よりも随分と早く集合場所についてしまった。
いつもは、あのことを思い出してしまうから、待つのはあんまり好きじゃないんだけど。
「あれ? 林檎?」
そう声をかけられて、ふと顔を上げた。
そこにいたのは、さっき通り過ぎたはずの自転車に乗った、雄也だった。
「雄也?!」
「すげえ偶然!」
「いきなり話しかけられたからビックリしたよ」
雄也は、ダメージジーンズにTシャツにネックレスというラフな格好をしていた。でも、それだけでもカッコよく見えてしまう。顔が整ってるって得だよなーなんて思ったりして。
「今から誰かと遊ぶの?」
「俺? いや。ブラブラしよーと思ってさ。暇だし、DVD借りてから郁也の家にでも行こうかなーなんて」
そう笑うから、なんだか言いにくい。今から、郁也がここに来ること。
「ああ、えっと、たぶんいないよ、郁也」
「え、なんで? あ、もしかして今から郁也とデートだった?」
その言葉に、顔を赤くした私を見て、雄也は笑った。
「なんだ、そっか。どこ行くの?」
「映画かなあ……」
「へえ、いいじゃん。郁也はまだ?」
「私が予定より早く来すぎちゃったから」
「……林檎はさ、郁也のどこが好きなの?」
私が少し雄也から視線を外した隙に、雄也の声のトーンが落ちた。