「さっ、行こっ。 ……あ、でも念のため別々に学校を出た方がいいかな? 部活やってる人とすれ違うこともあるだろうし」
「そうだな。 つーか、家の方向自体 違うし、今日はここで解散すっか」
「あー……確かに その方がいいかもしれないね」
本当はもっと一緒に居たいけど、ワガママは言えない。
マルはこのあと、トラくんの家に行くって言ってたしね。
お茶のペットボトルを渡すのは…明日以降でいいか。
早めに学校に行けば、写真を撮ってるマルにきっとまた会えると思うから。
「じゃあ私、先に出るねっ」
「あぁ、俺は自分の教室にカバンを取りに行ってから出るよ。 あとでメールするな」
「うんっ」
廊下に出たあと、お互いに笑顔を見せて手を振り合う。
自分の教室に向かうマルと、昇降口に向かう私。
別の方向に進みながらも、寂しさはまったく感じていなかった。
だってマルが、「あとでメールする」って言ってくれたから。
今まではSNSの画像とDMだけが私たちを繋いでいた。
でも…これからは違う。
今までよりも もっともっとマルを身近に感じることが出来るんだ。
「……」
廊下で、少しだけ足を止める。
ゆっくり振り返ると、遠ざかっていくマルの背中が見えた。
「……メール、待ってるね」
マルには聞こえないほど 小さく言ったあと、私はまた一人で昇降口へと歩き始めた。
今までにないほど、心を弾ませながら……──。