「……ふぅん」

「佐倉、ちゃんと聞いてる?さっきから反応薄くない?」


私の話を聞いているのかいないのか……。
真っ直ぐ前を見たまま適当な返事をする佐倉に、つい文句が零れる。


佐倉が思ってるよりずっと、本気で悩んでるのに。



「聞いてる」

「……うん、ならいい」


もちろん、そんな返事が欲しかったわけじゃない。


きっとまた、私が萌菜たちを騙してることとか、佐倉の恋を遠ざけてることに対して

『芽唯は悪くない』って一言安心できる言葉を優しい佐倉に期待してた。


そう、気付いたとき心底自分が嫌になった。



そんな私の気持ちを知ってか知らずか、少しの沈黙の後に佐倉が「じゃあ」と歩く速度を緩めて……


「……え?」


つられて歩く速度を落とした私に、今度こそ完全に佐倉の足は歩くのをやめた。



「ふりすんの、やめる?」

「……っ、」

「つまり、周りを騙して付き合ってるふりしてる今の状況が嫌なんだろ」

「そ、それはそうだけど」

「だから、やめる?」



笑うでもなく、怒るでもなく、ただ感情の読めない声で、静かに。