長くても、十日。伯爵も十日後の結婚式までにはこの館に到着しなければならないはずだ。なるべく早く見つかってほしい。見つからなかった時のことは、今は考えたくもない。

 ただ、ベアトリスは時折突拍子もないことをしでかすけれど、決して無責任な行動はとらなかった。そのことだけを頼みに、ローズは一人でこの状況を乗り越えなくてはならない。

「……いい香り」

 持っていた花束から、ローズを励ますように甘い香りが立ち上る。その香りに少しだけ心を癒され、ローズは、ほ、と笑みを浮かべた。

「うん。こうなったら仕方ないもんね。お嬢様のためにがんばろう」

 そう気合を入れるとローズは、バラの花を花瓶に活けるために立ち上がった。