保てるのか…僕の理性…
今日はお父さんが遅番だから帰ってこない。
帰ってきても深夜。
…僕のためというのは分かるけど、少し寂しい…
「叶夢くん?」
「どうしたの、希望」
「あのね、ここわかんない。」
…基礎だよね?
「…分かった。希望、まず確認だけど。」
「なーに?」
「和差積商は出来る?」
「…?
…あ、うん、できる!」
…今考えた?
わざと考えさせるようなことを言った僕も悪いけど…
「分かった、出来るならいい。
…この問題は…」
…初めてだ。
人に教えるのは。
学校でも僕は比較的話さない。
前の席の人が話しかけてくるけど、必要以外話さない。
体育で2人組になる時にその人と組んでるから特には困らないけど。
「…?あ、そういうことか!」
…うんうん。
少しずつ理解してくれたらいいよ。
…妹みたいな存在だったのに…
この可愛い顔が悪い。
成長するにつれ、希望は綺麗な顔になった。
中学生には思えない高い身長も…
…これ、頭良かったらモテる…
「叶夢くん、これは?」
「ん。同じやり方だよ。」
…希望の魅力に気づいてしまったからな…
普段髪下ろしてるから分からないけど、今みたいに髪を片側に寄せてしまうと…
希望のうなじが見えるんだ。
…妙にセクシーさがあって、見たら僕の理性が持たない。
「叶夢くん?顔赤いよ?」
「…うるさい。」
希望は僕の顔を覗き込むようにして見る。
「熱でもあるの?」
「ない。」
僕は立ち上がって希望の隣に行く。
「え?!どうしたの…」
「…だめ?」
せっかく付き合えたんだ。
少しくらいそばにいさせてよ。
【中矢叶夢side END】

【柊希望side】
…叶夢くん。
その顔は反則だよっ…
綺麗な顔が近すぎて…
心臓の音聞こえちゃうっ…
「…希望」
「ひゃい!!」
叶夢くんは私の声に少し驚いたような顔をする。
そしてクスッと笑うと勉強を再開した。

「ー…んーっ!なんとか範囲終わったー!」
「…希望、ご飯どうする?」
「あー…」
時計を見ると7時半。
お父さん帰ってきてないだろうし…
お母さんと食べようかな。
「家で食べるー」
「…そっか…」
叶夢くんの顔に少し曇が出てしまった。
…そっか。
叶夢くんはいつも独りで…
私は教科書類を突っ込んで叶夢くんの腕を引っ張る。
「え、どうしたの、希望」
「いいから!鍵!」
「はい。かけました。」
叶夢くんはキョトンとした顔で私を見る。