そんな話をしていると、袴に着替えた凪沙が「どうかな?似合う?」と現れた。髪にはリボンをつけている。

「わあ〜!凪沙かわいい!」

恋雪が明るく笑う。凪沙が照れくさそうに笑った。

「みつる、どう?」

凪沙が頰を赤くしながら訊ねる。俺は少し考え、言った。

「馬子にも衣装!」

「ひどい!」

恋雪と凪沙が同時に言った。



その後は、博物館内をいつものように回る。しかし、大正時代の衣装を着る体験をしているからか、大正時代に関係するものが多い。

「わあ〜!これが昔のラジオかぁ〜」

凪沙がはしゃぐ。

「ラジオ放送は、1925年から始まったんだ」

俺はその横で解説をする。

「大正時代って、民主主義を求める動きがたくさんあったんだっけ?」

恋雪が展示物を見ながら言う。

「大正デモクラシーだな。その影響で、いろんな社会運動があったんだ。たとえば、賃金や労働時間をめぐる労働争議や、平塚らいてうたちが進めた女性差別を目指す女性運動などがある」

「女性の差別?」

二人が顔を見合わせる。

「今では、男女関係なく選挙に行けるだろ?大正時代の普通選挙法は、満二十五歳以上のすべての男子に与えられ選挙権が与えられたが、女子の選挙権は認められていなかったんだ」

「ええ〜!!」

凪沙が大声で叫ぶ。迷惑だろ!

「後は、大正時代には関東大震災が起こったな。九月一日が防災の日なのは、関東大震災がその日に起こったからなんだ」

「確か、その混乱の中で嘘の証言が出て、多くの朝鮮人が殺されたんだっけ…」

恋雪が暗い顔になる。

「そうだ。だからこそ、知っておかないとな」