メガネの奥の目をきょとんとまたたいたあと、森さんは「ああ、スマホ?」と手元を見下ろした。

「そうだなぁ。使えないことはないしずっと同じ機種だったから新鮮な気もするけど、結局は一時しのぎだね。やっぱり元のヤツのほうがいいよ」

「ですよ、ねえ……」

 泣きそうな声を出しながら、スタンディングテーブルに突っ伏した。ちらりと視線をやると、向こうのフロアで新庄さんがみんなに囲まれている。

 彼女がいるだけで、社内の空気は見違えるくらい明るくなる。

 やっぱり、全然敵わない。

 同じような背丈で、彼女からもらった服を着て、ここ最近は仕事も覚えて自分なりに社長の役に立てるように頑張ってきたつもりだった。

 でも本物が現れたら、私の存在なんて一瞬で霞んでしまう。