けれど、すぐに温度が上がった。

ジュッ!

障壁は溶けていた。すべて、一欠片も残さず。

「ごめんなさい」
絶対にそう思ってはいないだろう、たんぽぽのような、明るく可愛い笑顔を浮かべて、男の首を蹴った。
よっぽどのことがない限り、吹っ飛ばされることはないだろうし、肉弾戦でも勝てるなどと思っていた。

だが、結果はどうだ?

紙切れのように吹っ飛ばされた。
衝撃はかなりの物だとは思ったが、生ぬるい鍛え方はしていない、しているはずもない。すぐに立ち上がる。

1歩踏み出そうとしたが、動かない。

「ごめんなさい」
同じような笑顔を浮かべ、近づく。最早、男はサンドバッグだ。