「何って化粧品だよ!見てわかんねぇ?」



たった今それが入っていたドラッグストアのビニール袋を丸めながら、ジロは片眉を上げる。



「いや、そりゃ見ればわかるけど……。そうじゃなくて、こんな大量の化粧品どうしたの?」



何がどうしてジロが化粧品なんか持ってきたのか、私にはさっぱり検討がつかない。


メイクアップアーティストにでもなるつもりかジロ。


恋の次はメイクに目覚めたっていうのか。


突拍子がなさすぎて、私はお前さんに全くついていけないよ。



「美恋はこのへんの化粧品が合うだろうって一花が。アイツに言われたやつ、一通り買ってきた」


「え!?あんた、一花ちゃんまで巻き込んでるの!?」



一花(いちか)ちゃんとは、ジロの4歳上のお姉ちゃんのことだ。


うちの一番上のお兄と同級生で、昔から私のことをまるで妹のように可愛がってくれる。


私も一花ちゃんのことを本当のお姉ちゃんのように慕っていて、お兄達には言えないような相談もいつも一花ちゃんにならできた。


美人で優しくて、その上頭も良くて、私の憧れの存在だ。



その一花ちゃんまで巻き込んで、一体コイツは何をしようとしてるんだ!?