「お、和佳菜じゃん。お前もこっち泊まったのか?」

「おはよう翔。そうなの、翔も泊まったのね」

「泊まったっていうか、ここが俺の家だし」

「翔はここに住んでるの」

それだけいうと、綾は熱心にフライパンを動かす。

「ねえ、翔…なぜ」


「俺風呂入ってるわ。綾、湧いてるか?」


遮られた……。

普段絶対にあたしの話を最後まで聞いてくれる翔が。

ふざけるくせにあたしに甘い翔が。

あたしの話を初めて遮った。



「お前がいつも沸かせっていうから湧いてるけど」

命令はしてねえだろ、と言いながら、階段の奥の風呂場に消えていく翔。


その後ろ姿を見ながら呆然としているあたしに、綾は。

「それ以上聞かねえ方がいい。あいつの為にも、お前の為にも」

それからすぐに、はい出来た、とオムライスと焼き魚の乗ったプレートをあたしの前に置いたのだけれど。







あたしはすぐにはなにも言えなかった。