翌日、千歩がベッドで目を覚ました頃に秋人の姿はどこにも無かった。

もしかして帰って来なかったのだろうかと少し心配になる。

今日はずっと待ち望んだ非番の日だったはずだが、秋人がいないのであれば千歩にとって体を休めるだけの普通の休日にすぎない。

布団から這い出てリビングへ行くと、ダイニングテーブルにチョコレートの空箱がそのままにされているのを見つけた。


“チョコレートありがとう。美味しかった”


千歩が書置きしたメッセージカードの続きに秋人からのメッセージが綴られていた。

「帰ってたんだ……」

千歩はホッと胸を撫で下ろす。

こんなところがあるから、どんなに離れていようと愛し続けていられる。


久しぶりに腕を振るおうかな……


千歩は冷蔵庫を開けて食材の確認をする。

手作りごはんでバレンタインデーの仕切り直し。

退屈なはずの非番の日が少し楽しくなった瞬間。



No.02 バレンタインデーのお話 fin.