義理チョコを配り終えれば、女性警察官たちは通常の業務に戻っていく。

書類整理にパトロール、仕事は山のようにあるし湧き水のようにどこからともなく溢れてくるもの。

千歩はその日の午後、いつものように同僚の麻衣子とパトロールに出かけた。

バレンタインデー当日とあって、街はピンクやパステルカラーの可愛らしいデコレーションが施され、甘いスイーツを販売しているお店には若い女の子たちの姿が目立つ。

「今日も平和だよね。街はハート飛び交うお祭り騒ぎだよ」

ハンドルを握る麻衣子はほのぼの語る。

千歩はそれを横で聞いていて「そうだね」と相槌を打った。

二人が乗るミニパトは、ちょうど赤信号に引っかかったところだった。

若いカップルが手を繋ぎ、仲睦まじそうに横断歩道を渡っていく。