後ろから社長に抱きしめられているせいで、躰を動かすことができない。

なんて、逃げるつもりなんて毛頭もないけど…。

でも、心臓はドキドキと早鐘を打っている。

こんなにも距離が近い…。

もしかしたら、社長に心臓の音を聞かれてしまっているかも知れない…。

と言うか、社長は社長で何でこんなことをしているんだ…?

「君が隣にいると、とても安心するんだ」

社長がそんなことを言った。

それは、どう言う意味なのだろうか?

「どうしてなんだろうね…」

「――ッ…」

社長はギュッと私を強く抱きしめた。

そんなことを言われた私は、どうすればいいのかわからない。

“どうして”って聞きたいのは、私の方ですよ…。

社長に抱きしめられながら、私は心の中で呟いた。