彼は矢田 彰(やた あきら)。
中学2年生の時にこの学校に転校生としてやって来た。

私の彼に対する第一印象は
『イケメン』

しかし、同時に彼のことは好きにはならないだろうと謎の決断をした。

3年生になり、同じクラスにはなったものの当初は挨拶すらしない本当にただのクラスメイトだったのだけれど、共通の友人を経て少しずつ話すようになった。

話してみると以外にも共通の趣味を持っており、付き合っている等と噂されるほどまでには仲良くなった。

もちろん、付き合っているわけもなく正直そのいじり方にはうんざりしているのだけれど、趣味の話をできる数少ない友人を手放すことは出来なかった。

「..ゎ!おざわ!」

「ッん!ッえ?どうした?」

「いやいや、どうした?じゃねぇーよ。
なにボーッとしてんの?なに?おれに惚れた?」

「...矢田くん。鏡貸してあげる。」

「..冗談だよ。なんだよ、いつも通りじゃねぇか。心配して損した。」

「心配どーもありがとー。」

「きもッ」

「なんて?」

「窓閉めていい?寒い。凍え死ぬ。」

「えッ。あぁー、まぁいいよ。」

「ってかなんで毎回窓全開なわけ?
 お前雪男かなんかなの?」

「寒い方がいいの!
 ってか男じゃねぇーよ女だよ。」

「相変わらず変なやつだな。」

「矢田くんに言われたくないんですけどー
そう言う君は何故今日はこんなに来るの早いの?
いつも遅刻じゃん。日直の時ですら。」

「いつもじゃねぇし。たまにだし。
ただの気分だよ!気分!」

「あっそ。まぁ、私の邪魔をしなければなんでもいいんだけどね。黙って宿題でもやってな!」

「余計なお世話。」


ここから沈黙が続く。彼はいつもこう。
なんの用もないのに早く来る。気分とかいって本当は私の邪魔でもしようとしているのでは?と思うほどに早く来てもただ席に座ってボーッとするか、私のしていることをただジーッと見るかどちらかだった。

本当に..変なやつはどっちだ!
私は彼の背中を睨み付ける。