「なあ、和佳菜」



「なに」

「和佳菜のお友達サン大丈夫だった?」


「流梨花のこと?お腹痛くなってトイレにこもってたらしかったから、平気だったわよ」


「…そう」


違う、本当は違うんだ。


『高岡君、やっぱり苦手で、逃げちゃったっ!ごめん』

さっきトイレでそんな話を聞いたのだから。

『高岡君には言わないでね』


そう、念を押した彼女の選択が正しいとは思えない。

あたしも言ったのだ。

『高岡に言って、距離をとってもらえるようにすればいいんじゃない?』

それでも彼女は、首を横に振った。

それじゃあダメなんだと。


『何かのグループワークで必ず関わる時が来るじゃん。その時、嫌いだって言ってたら、話しにくいでしょ?』


『でも、嫌な気持ちになるなら、関わらない選択だって取れるでしょ?』


『うん、そうかもね。でも、いいの!流梨花だって男嫌い直したくないわけじゃないから!』

どこか寂しそうに言う彼女が、そう望むなら。

あたしはそれに応える。


「なあ」


今度はなんだ。


そう思い、振り向くと。



「……なにそれ」



般若のお面をつけた綾がこちらを向いていた。