「あの、琢磨さん。ずっと気になってたんすけど、姪である和佳菜の話は今まで一度も聞いたことがなかったんです。それは、なぜ……」
「琢磨、行こ」
「ちょっ和佳菜、お前なあ」
琢磨が文句を言いたげだけど知らない、知ったこっちゃない。
「あの、質問に…」
「ねえ、もういいでしょ?早くみんなに会いたい。あなた達には今度説明するから」
琢磨をグイグイと引っ張って、人だかりから出る。
「ちょっ!」
綾が手を伸ばしたけれども、その手をさらりと抜けてしまう。
ごめん、今ちょっと話したくない。
話して欲しくない、が正しいのか。
「じゃ、さよなら」
夜の街に消えたくて、早足に彼らから離れた。