男もまた呆れたように振り返り。
「…Wolf、こいつなんなんだ」
Wolf と呼びながら、綾を見た。
「あーあ、俺の予定じゃ、明日発表するつもりだったのになあ」
ガリガリと頭をかきながら、綾は困ったように笑っていた。
「なあ、バラしてもいい?和佳菜」
「あたしになんで聞くの」
「言ったら、和佳菜の人生が変わるから」
変わる、とは何を指すのだろうか。
というか、こいつは何を言っているんだろうか。
あたしは何も聞いていない。
「そんな人生簡単に変わらないわよ」
「その言葉、明日になっても言えるかな?」
「ねえ、本当にどういう意味なの?あたし、何も理解してないんだけど」
「知りてえなら、今ここで言うけど」
「そういうことを言ってるんじゃない」
「で、どうなの。いいんか?」
その大きな目から逃げるように目を逸らした。
「…別に。そんなにすぐに人生変わらないし」
「なら、いいか。こいつはな、いずれお前らに紹介するつもりだったんだ」
「どういうことだ」
Beast と呼ばれる男の眉間にシワが深く刻み込まれる。