「見たところ高校生だよね、学校はどうしたの」

 その日今年1番の寒波を観測した東京は、空町(そらまち)。


 頭の高い位置でくくったポニーテールにマフラーをぐるぐる巻きにして。駐在所前で仁王立ちする私のスカートからは、無防備な素足が剥き出しだ。おまけにクリスマスでもないのに赤くなった鼻からは非常にも鼻水が垂れてきて、子どものようにぐすっと啜ってみせる始末。

 だって、言えばすぐに掛け合ってくれると思ってた。


 誰かがいなくなったら、心優しい駐在員が血相を変えて署の中に導き、暖かいお茶を出して話を熱心に聞きながらすぐに捜索願の手続きをする。

 ドラマや映画じゃよくあれど。
 現実はそうじゃないらしい。



「おまわりさんは自分の子どもが突然姿を消しても、のん気に出勤するんですか」

「それとこれとは話が別でしょう」

「同じだよ、立場が自分か他人かそんだけだ。いいからさっさと探してよ」

「探すにも君の素性が知れないことには何一つ始まらない」

「足立多香、南中高校2年3組17歳」

「いやめちゃくちゃ高校生じゃんか」