いっそ、激怒して距離を置かれた方がよかったのかもしれない。変に優しくされると私の心は弾んでしまうのだから。
「サキはあっち側からはいていってね」
「了解」
私はサキと反対方向から床にたまった紙くずやホコリをはいていく。
三年も間が空いているのでお互いどんな距離感だったのか掴めずにいるこのなんともいえない空気。
教室のグラウンド側にいる私と廊下側にいるサキ。
それはまるで今の私たちの距離のように思えた。
その距離はいらないものを排除していくうちに徐々に縮んでいくのだろうか。そんな疑問をつい抱いてしまう。
サキはそんな私の気持ちなんて知りもしないから颯爽と掃除をしている。そんなサキの姿を見てふと声が漏れた。
「あ、そういえば昨日蛍光ペン返すの忘れてた」
それと同時にカバンを開けて、ペンケースを取り出してサキから昨日貸してもらった蛍光ペンを手に取る。
昨日、サキは琴音とデートで私も健吾の言葉で動揺していたから頭から抜け落ちていた。