この家を建ててもう八年。
 
 子供ができたことがわかり、前に住んでいた狭いアパートは出ることにした。
 
 ちょうど結婚生活にも慣れ、互いの生活パターンも分かり気持ちの方も余裕が出てきて、持ち家が欲しいと話していたところだったので、一戸建てを建てることを決意した。
 
 生まれてくる子供の部屋も、夫婦の部屋も、また子供が増えた時のための部屋も、一つ一つ真剣に相談した。

 設計士とも話し合いを重ねた。
  
 そうして建てられた念願の新居で娘を迎え、その娘も五歳を迎えた秋、夫の転勤が決まったのである。

 娘が幼いこともあり引越しも考えたが、慣れない土地に行って余計なストレスを増やすよりも、お気に入りの慣れた場所でよったりと子育てに専念したかった。