何がどう違うかは明確には分からないが、『普段の佐藤』ではないことは、確かだった。


『普段の佐藤』は、パソコンでのミスは相変わらずあるけれど、仕事の進捗に影響を及ぼすほどではないし、頼まれた仕事はしっかりと最後までやっていた。


それから、『普段の佐藤』は、俺のことを避けていた。


そう、佐藤は、三年前からずっと、どうやら俺のことが苦手らしい。


仕事と割り切っているのか、仕事中は業務連絡といった会話はするが、それ以外の時はあまり言葉は交わしたことがない。


交わしたとしても、せいぜい、挨拶ぐらいだ。


どの上司にも、どの同僚にもそうなのかと思っていたが、どうやら違うらしく、何度か休み時間に他の社員と佐藤が、普通に立ち話をしているのを見たことがある。


俺だけなのか?


佐藤に苦手だと思われているのは、自意識過剰かもしれない。


だが、そうも思わざるおえないのも確かだった。


佐藤は、極力俺と目を合わせない。


これは、気のせいでは無く、確かなことだった。


俺を視界に入れていない。


仕事だからあからさまに目を逸らすようなことはしないが、なんだか避けてわざと見ていないような、目が合っても曖昧に何度か瞬きをして、すぐ下を見てしまう。


まあ、俺のこと苦手ならそれでもいい。


普段から、随分厳しい物言いをしていると自覚はあるし、優しい言葉でも態度でもないのは確かだから、俺に対してあまり良い印象を持っていないのは、仕方がない。


そうだ、しっかりと仕事さえしてくれれば、後は佐藤が俺のことをどう思っているのかなんて、気にする必要はない。


……気にする必要は、ない。


そう思っているのに、何故か俺は、佐藤に苦手だと思われていることを素直に認めたくなかった。