「新八には、ライバルがいるか?」

私にはいるよ。友達じゃなくて、ライバルがね。同い年で、毎日あっては戦っていた。

「いるよ。俺のライバルは、総司だな。一番の友達で、ライバルだ」

一番の友達でライバルか。我にもそう言う友達がいたら良かったのに。天狗に生まれても、いいことなんてない。無駄すぎる力を得て、ずっと山奥独りで、膨大な力で人を殺め、刺客を追い返す毎日。それに対して人間は自由放棄で友達もいて、力も強くない。

「千夜ちゃんにもいる?」

「いるよ。昔のことだがね、ライバルがいたさ」

「へぇ、どんな人だったの?」

十年程前、まだここらにいなかった時のことだ。あいつと一緒にいたのは。

「私がうまれたのは、ここから遠く離れた場所だ。そこでいつもライバルと一緒に暮らしていた。まぁ、ライバルは我のお兄ちゃんなんだがな。だけど十年前、我とお兄ちゃんは別れの時を迎える。それから一回もあったことはないよ」

あれから一回もね。あいたいけど、あえないよ。

「会ってみたいな」

「あんまりオススメはしないよ。お兄ちゃんはかなり、人間を嫌っているからね」

天狗はみんな嫌っているよ、人間のこと。だけど、お兄ちゃんは特に嫌っている。私も憎んで嫌っているが、お兄ちゃん程ではない。まだ『あの頃』私は小さかったからね。だって私達のお母さんは、人間に殺されたんだから。

「会っちゃ駄目なの?」

「殺されるかもよ?それでもいいの?」

「うん、いいよ」

私はこうして人間でも皆が汚いというわけではないと学んだ。だけど、お兄ちゃんはあの頃もう物心もついていた頃だったから、許せるわけがない。

「いいよ、今度あわせてあげる」

丁度、私もあいたいと思っていた頃だしね。あえないわけでもないし。行ってみるか。