「夏目も、俺なんかに関わってもつまんないと思うからやめとけよな」
「なに、それ……」
つまんない?
なんでそんなこと言うの?
ハテナ顔を浮かべて困惑する私をよそに、水野君は私の横を通り過ぎてスタスタと階段を下りて行く。
「ちょ、ちょっと!」
呼び止めるもむなしく、その背中が振り返ることはない。あっという間に気配がなくなり、再び静寂が訪れた。
追いかける気も起きなくて、しばらくその場から身動きができなかった。
誰とも仲良くする気はないなんて……。
つまんないからやめとけだなんて。
その声はとても弱々しくて、頼りなくて、切なくて、儚げで。
そして、とても苦しげだった。