むしろセドマをうまく誘導している節がある。

オルキスの堂々とした振る舞い、それから先ほどセドマを連れていけなければ王子に怒られるとも言っていたことなどから、彼は自分が想像しているよりも高い地位を得ている人なのではとリリアは推測する。

オルキスと一緒に行けば、確実に王子様と引き合わせられることになるだろう。

その時オルキスは、微笑みながら自分を王子の元へと送り出すのだろうか。

面白くない……そんな感情がリリアの中で渦を巻き始め、モルセンヌへ行けることになった喜びの傍らに、僅かな陰りが生まれる。


「雨も降っている。モルセンヌには明日の朝に発つとしよう。準備を頼む」


オルキスの一言で、アレフとアレグロが活気づく。

今晩泊まれる場所はと問いかけるアレフに、それならぜひ家にとアレグロは顔を輝かせ、セドマは気だるげに床の上に広げていた荷造り途中のそれへと歩み寄っていく。

動き出した皆の様子をぼんやり見つめていたリリアの頬に、オルキスがそっと触れた。


「良かったな。リリア」

「……うん。とっても嬉しい」


自分に微笑みかけてきたオルキスを複雑な気持ちで見つめ返し、リリアは力なく笑い返した。