「梨乃、しばらくそばにいて良い?」

功はそんなことを聞き、私の顔を心配そうに覗く。


「うん。部屋行こっか。」

そう言ってドアノブに手をかける。

でもその瞬間、突然涙が溢れでてきて
手が小刻みに震える。


自分でも分からないほどに。

「梨乃?…梨乃っ」


功はそんな私を見かねて、功の胸に抱き寄せた。

一瞬何があったのか分からなかった。



でもそれは勢いがあって、抱きしめられてることにようやく理解した。



そして、私が必要としていた温もりだった。


「……功?」


「辛かったよな…
梨乃、でも心配する事ないんだよ?
僕がそばにいて、
いつでも話聞くから。……な?」


そんな私が言って欲しいことを、全てかけてくれる功。

さらに涙が溢れ出す。



「…うぅっ…功…
私、何にも、出来なかった。

お父さんとお母さん…引き止めることも…

全部梨乃が、
…梨乃が何にも出来なかったから…」



あーあ、功の前だと歯止めが効かない。


こうやって抱きしめられてると、
功だけには心が許せて、


ずっと溜め込んできたものや罪悪感が全て言葉となって溢れ出してくる。


「大丈夫…大丈夫。
梨乃は何も悪くないから…」



功は優しく私の頭を撫で、さらに腕の力を強める。

でもその腕は優しくて、私の不安を全て取り除いてくれる。


「…功、ずっと私のそばにいてくれるの?」

「うん。ずっと梨乃のそばにね。」


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