私と同じ年に佐野も赴任してきたのだが、その頃からの付き合いで3年はこんな感じである。


「はいはい、うるさいから起きますよ!…何か飲みたいんだけど…あ、麦茶貰うね」


ベッドから気だるそうに降りて、熱中症気味の生徒に飲ませる為に冷やして置いた麦茶を勝手に飲んでいる。


こんなのが教師で世の中、大丈夫?


「…勝手に飲むな、生徒用に冷やして置いたのに!」


「まぁ、いいじゃん!それよりさ…」


悪びれもないままにグラスに注いだ麦茶を飲み干し、茶色ががった前髪をかきあげながら話を続けた。





「……本当にお見合いするの?」





年齢も結婚適齢期に差し掛かり、昨年の忘年会の時に彼氏が居ないと言ったら、お節介な校長夫人がお見合いの話を持ち出したのだ。


偶然にもコイツと同じ数学教師で、向こうはエリート大学出身の好青年だそうだ。


「…最終的には断るにしても、校長夫人が段取りを決めてるらしいから行く予定。まぁ、数学教師なんてロクなの居ないから、お断り必須だけど!」


「付き合いを断れなかったら?」


「……そんな事は考えてなかった」


「どんな自信だよ?校長夫人が破談させると思うか?向こうが気に入れば、押してくるに決まってるぞ?お前を気に入るだなんて、どんな強者かって思うけどな!」


ケラケラと茶化して笑う姿が何とも憎たらしい。


私だって望んでお見合いしたい訳では無い。