「さっさと風呂入ってこい」


暁はそう言って、ソファのそばに置いていた自分の大きな荷物をかかえて、奥の右側にある扉を開けようとした。


「そ、そっちはわたしの部屋!!なんでもかんでも勝手に開けないでよ!!」


玄関から叫ぶ。


「...泣いてたくせに、うるせぇやつ」


「は、はあ!?泣いてなんかない!雨で濡れてただけだから!!勘違いしないでよねっ」


わたしの怒り声なんて無視して、暁は左側の扉を開けて中に入っていった。


それを引き止めないわたしは、

...もう同居を認めたことになる。


「...仕方なしになんだから!」


わたしはそうつぶやいて、バスタオルをぎゅっと握りしめた。


同居を認めることが、わたしの精一杯の“ありがとう”だった。