「チッ、本当は頭を狙ったのに」



そういったが、
実際は肩を狙って命中した。

男を怯えさせるためにわざとそう言っただけだ。


私は用心しながらも男に近づいた。

男をよく見ると、私の投げたナイフが
足に刺さっている。


よく歩いてこられたな。



「中途半端な深さで足に刺さってしまったか。もっと分かりやすい穴を空けてやろう」



ーーダーン

近距離だったので今度は“正確”に当たった。

男は痛いことも忘れてただただびくついている。



「さて、次は外さないから安心しろ」



男の頭に銃を向ける。

と、死にたいしての恐怖が沸々と出だしたのか、男は命乞いを始めた。



「ゆ、許してくれ」



「私を殺そうとしたくせに?よく言うな」



男は今更になって片手で撃たれた足と肩を押さえた。

今の今まで本当に痛みを忘れていたんだろう。



「死ぬ前、先に感じるのは音だ。

そのあと、じわじわと傷ついた場所が
痛み出し、耐え難いほど熱くなる。

最後にはこう思うんだ。
周りがうるさい、自分の鼓動が、
時計の音が、何もかもが。

吐息の速度が落ちるにつれ、
あぁ、自分は死ぬのか……と客観的になる」



私は、人を殺してまで金を欲しがるような人生に未練たらたらな男を侮蔑の目で見ながら、迷わず引き金を引いた。

ーーダーン!



「尤も、脳天を撃たれた場合、どうなるのかは知らないがな」



男は返事をせずに、死んでもなお、
ただ私を見つめていた。

『助けて』と懇願するような目で。


しかし私はなんとも思わなかった。

あの少女の時のような気持ちになど、
全くならない。

寧ろ、人の命を狙っておいて、
しかもその相手に助けを求めるプライドが紙切れのように薄いこいつに、

同情なんかしたくもなかった。