「帰りは二週間後になるだろう」

「二週間ね。分かった」


聞き慣れたぶっきら棒な言葉に対し、リリアは微笑みながら返事をする。

そしてほんの少しだけためらいを見せたあと、気になっていたことを思い切って口にした。


「……あの……お父さん。今回の行き先って……」


しかし、肩越しに振り返った父セドマの顔を見て、リリアは慌てて口を閉じた。

セドマにはその後に続く言葉がわかったのだろう。普段、あまり喜怒哀楽を見せないその顔に不愉快さを滲ませている。


「今回もちゃんと、村長にリリアのことを頼んでおいた。迷惑をかけないこと。奥さんの手伝いを手を抜かずにしっかりやること。そして……俺が帰ってくるまで、ここで大人しく待っていろ」


それだけ言って、セドマは目の前にある荷物へと視線を戻す。

大人しく待っていろ。声の強さから、そこがセドマの一番言いたかったことだろう。

もうこれ以上話しかけてくれるなという空気を放ち始めた父の背中を、リリアは頬を膨らませ睨みつけた。

王都から村長のところに使者が来て、村中にアシュヴィ王の花嫁の話が広まったあたりからずっと、セドマの機嫌が悪いのだ。