死。

それは、どんな生き物にも等しくやってくる。

生と共に存在し人生の終着点だ

かつて、ある小説家は「死神に囁かれる」という一節を死と表現していたが、今考えればそんな簡単に死を与えられるなら与えてやりたいものだと、夜の都会のとあるビルの上で立つ俺はタバコを吸いながら耽っていた

腕時計の時刻は午後十一時を過ぎており、後数十分で予定死亡時刻になる。
死神の仕事って言うのは思ったよりも重労働で、なんせ人の死に立ち会わなきゃならねえ上にそいつの人生に何か怪しい点は無いか調査しなければならない。
仕事を早く終わらせたいところが最悪な事に今回は例のアレに関連する魂を最後の最後で回収しなければならなかった。
 今回の魂は何ら普通の人間とは変わらない女子高校生の魂だった。
死亡理由は事故死、まぁあるあるだよな。この女子生徒はどうやら習い事のピアノの帰りに撥ねられちまい出血多量で死亡。
コイツの軽い年表は書いてあるが、俺からしたらなかなかな人生に見える。
お袋は有名なピアニストで、親父はチェロ弾きのまさに音楽家族といったところか。
おかげで、コイツは三歳からピアノを習わされており毎日学校から帰った後も四五時間近くピアノのレッスンてわけだ
俺は、生きていた頃はずっと自由だったからこういった家族の鎖という物はよくわからない。だが少なくともそれが理由で命を絶ってきたやつは数多く存在している。
……もしかしてコイツが“タイトル7”の印鑑を押されているのはやはりそれが理由なのだろうか。


 


 タイトル7(タイトルセブン)とは尋常じゃない執念が残る自殺、または強い未練がある魂が強制的に異動させられる場所で、死神になれる魂もこのタイトル7の魂だけである。
普通の魂であればそのまま地獄か天国に送られるがタイトル7に行くような魂は天国や地獄に行っても他の魂に危害を与えるか暴れるだけなのでしょうがなく死神にして働かせようという魂胆なのだろう。
まあ、唯一の救いがあるなら仕事中にばったり成仏することができるか後はみな死神で優秀な成績を修めて転生するかとあるが、それは本当に少ない事例である。
 ……さて、そんなことよりも例の魂の死亡時刻が刻一刻と迫っている。

それじゃあ、仕事始めますか。