私だって、とても気になってるし、本当は訊いてみたい。



「なぜ、沙也加さんと結婚しなかったの?」って。



その方が、占い師の言った見も知らぬ人間より、ずっと良いと思うのだけど…



きっと何かわけがあるんだ。
那月さんがそうしなかった、理由が…



そのことは、ずっと私の心のわだかまりになってしまったけど、やっぱり訊くことは出来なかった。



その間にも、私と那月さんの偽りの結婚生活は極めて穏便に過ぎて行って…
ただ、忙しくて占いの勉強をする時間がないことだけが、不満と言えば不満だったのだけど…
でも、そのおかげで、私はいつしか片言の英会話が出来るようになり、食事のマナーやセレブの嗜みもずいぶんと身に付けた。
見た目もかなり変わったと思う。
もちろん、まだ那月さんに相応しいと言える程のレベルじゃないけど…



私は、今、幸せだと言える。
贅沢な暮らしをさせてもらえてるだけじゃなくて、昔の私だったら、体験出来なかったでろうことをいろいろと体験させてもらえてるし、私がこんなに変われたのは偏に那月さんのおかげだもの。
パーティデビューも果たした。
とりあえず、那月さんに恥をかかせるような大きな失敗はなかったからほっとした。
最近は、伶佳さんのいじめもずいぶんとマシになった。
それだって、多分、私が変わったからだと思う。