その言葉に、わたしよりも先に知紘の方が反応して


「奪えるもんなら奪ってみろよ」


そう吐き捨てて、わたしを青井くんから遠ざけるように、教室を飛び出した。


無言でグイグイ手を引いて歩いていく知紘に必死についていく。


「ちょ、ちひろ!」


まったく聞く耳を持たない、こちらを見ようともしない。少し前を歩く知紘の背中についていくだけ。


掴む腕から伝わってくる強さはいつもより荒くて、乱暴。



今日の知紘は変だ。


青井くんに対する接し方がいつもの知紘らしくない。


普段クラスの子と話すときは、あんな風に強い口調で話したりしないし、そもそもクラスメイトとは余計なこと話すことすら嫌がっているのに。


だいたい、聞き流してるのに。


前を歩く知紘は何を考えているんだろう。