食べ終え皿をシンクの上に置き水につける。
生憎だが俺にその皿を洗える程の器は持ち合わせていない。

鞄を背負い靴を履く。

いつもならここで「いってらっしゃい」と聞こえるはずだがもちろん聞こえるはずもなくそのまま玄関を出る。


自転車を引っ張り出しサドルの上に跨りペダルに足を乗せ漕いでいく。

空を見上げると昨日起きたことが何もかも夢のように昨日の朝と全く変わっていなかった
まぁ、そんなもんか。


途中でコンビニに寄りたまごサンドを買う。
これは好物だ。

そういや、
あいつ何時くらいに起きんだろ。あんな病気だし案外遅めなのか?

昨日出会った不思議な彼女の事を思い出していれば噂をすればなんとやら、見覚えのあるフワフワした栗色の髪が遠くの方に見えるのが分かった。


もしかしてあいつ、か…?
いや待てなんでこんな朝早くにいるんだ、普通まだ寝てんだろ。
つかフラフラしてね?

色々と突っ込みたい所はあるものの、まだ寝惚けているのかなんなのか若干足元が覚束無い彼女の元に急ぐ。

あいつ、ただ眠いのに無理に起きてきたのかよ。ったくしょうがねーか。また乗せてってやるしかねーな。

そう思い後もう少しという所で彼女が前に向かって倒れ込んでいく。

それに目を見開きながら自転車をから反射的に飛び降り走って彼女の体を支える為に手を伸ばす。

「っっ……!」

ぎりぎり地面に膝をつける程度で済み、彼女も地面に激突する事は避けられた。

「あっぶねー…。おい、瀬奈何やってんだ、起きろって。」

そう言って揺さぶるも一向に起きる気配がなかった。
ピクリとも動かない体に思わず冷や汗が出る


「おい、瀬奈。おい!!」

焦りつつ彼女の腕を取り脈をとる。

異常がない事を確かめつつ腕時計を見る。
7時15分か…まだ人気はすくねーだろな
くそ、まだ教師もいるかどうか怪しい時間帯じゃねーか。

最悪強行突破も覚悟しながら彼女を抱き上げサドルに乗せる。
そして彼女の体を支えながらまだ遠い学校へと全力でスタートを切った。