「そろそろ教室戻んないと怒られるかな〜」

わたしは屋上を出て教室に戻った。席に座っ

た途端、前の席に座っている女の子が振り返

った。

「あんたまた屋上行ってたの?ほんっと好き

よね〜」

「仕方ないじゃん、歌えるのあそこくらいだ

もん…」

朝から絡んでくる女の子は林 ももちゃん。

小学校からの仲だから付き合いは長いね!

わたしの耳が聴こえないのももちろん知って

る。だから話すときは小さな紙に書いてくれ

てるから助かってるの。

わたしの耳が聴こえないことを知ってるのは

ももちゃんと担任の松田先生くらいかな?

人見知りだし、クラスで騒ぐような性格じゃ

ないから人とはあまり関わらない。

ももちゃんと少し話してから次の教科の準備

をしていたら教室のドアが開いた。

その途端クラス中の女の子は目をハートにし

てドアに目をやった。そこにはクラスのリー

ダー的存在の神崎りくくんが立っていた。

まあ、神崎くんと関わりがないから何も思わ

ないけどももちゃんいわく、クラスの女の子

は神崎くんの顔がイケメンでお調子者な性格

が好かれる理由でもあるらしい。

わたしだったら物静かで読書が好きな男の子

の方が好き。

なんてぼーっと考えてたら神崎くんはわたし

の席まで近付いてきた。

「おいお前、さっき屋上で歌ってただろ?」

ん?神崎くんは何言ってるんだろ?

わたしは意味が分からず首を傾げていると、

「だーかーら!さっき屋上で歌ってたのおま

えだよな?」

なんで少し怒ってるんだろ…。

わたしはももちゃんの背中をチョンチョンと

つついてメモに神崎くんなんて言ってるの?

と書いて渡した。

ももちゃんから返事が来るまで待ってる間、

神崎くんは少しイライラしている感じだった

少ししてから返事が来て、

「はながさっき屋上で歌ってただろ?って神

崎はあんたに聞いてたのよ。」

え?!聴かれてたの?誰もいないと思ってた

のに…油断大敵とはこういうことなのかな…

わたしは急いでメモに言葉を書いてももちゃ

に渡した。ももちゃんは神崎くんの方を見て

「屋上で歌ってたのははなよ。それがどうか

した?」

「そうか。でも何で林が答えるんだ?俺はこ

いつに聞いてたんだぜ?」

「別に誰が答えてもいいじゃない。解決した

んだからさっさと座れば?」

2人で何話してたのか分かんないけど神崎くん

は自分の席に座ったけど顔はイライラしたま

んまだった。

それよりわたしは歌声が聴かれてたことに肩

を落としてしまった…