「もういい! 変態! しね!」


こっちは恥ずかしくってたまらないっていうのに、郁也はどこまでも涼しい顔をして笑っている。

ていうか、私のファーストキスがこんな奴に奪われたなんて信じられない。

めちゃくちゃ腹立つ。
ふざけんな馬鹿野郎。
ぜったいぜったい許さないんだから…!



「………俺が初めてなんだろ?」

「……はあ?」


またコイツはそんな恥ずかしいことペラペラと!馬鹿にしてるに決まってる!郁也を睨みつけると、そんなの気にしない様子で私のほうをじっと見ている。



「ハッキリ答えろ。俺が初めてか?」

「……は、な、なんでそんなことアンタに言わなきゃいけないの」

「……いいから答えろよ」



フッと、一瞬風が吹いたような気がした。ヘンな汗がどっと出てくる。郁也は顔が整いすぎているからか、真面目な表情をすると雰囲気が一気に変わるのだ。

こう、なんていうか、捕らわれてしまう。その、まっすぐな瞳に。



「……私がそんな経験豊富だと思う?」

「……思わねーな」

「やかましいわ」


それはそれで腹立つなチクショウ。