「や……めろってばっーーー!」
これ以上はヤバイと思い全身に力を込めて郁也の胸板を押すと、郁也が驚いたように私から距離をとった。
ぜーはー、ぜーはー。
息の吸い方もわからない私は呼吸なんてできないくらいなのに、郁也は綺麗な顔して私を見ている。ゆ、許せん。
「な、なに、すんのっ……」
「………キスへったくそだな」
はああ?! 今言う言葉がそれか?!
違うだろーが! このクソオオカミが!
「ふ、ふざけ、」
「ま、そこもいいんだけどな」
「…は?」
「……いや、こっちの話」
いやいやいや。人のファーストキッスを奪っておいて「キスへたくそだな」だと? あったりまえだろーがぶわーかふざけんな!
「最低、ふざけんな、ばか、しね、」
「……つーか、初めてなんだろ?」
「はあ?! あったりまえで……」
しまった。
これじゃあ恋愛経験ゼロですって自分で言っているようなものだ。穴があったら入りたいとは正にこのこと。
恥ずかしさで熱くなった頬に手をやると、そんな私を見て郁也が笑い出した。笑うなっつーの!