しかも、あたしの両親のことにまで気を使ってくれるなんて優しい人だなぁ…と思っていたら
「親にバレたらそっこー追い出すからな」
なんて言われて、やっぱり優しくないかも…と思った。
でも、面倒見は良さそうな気がする。
なんだかんだ言ってあたしのことを
いつも助けてくれるのは慶さんだもん。
「うん。いいよ
きっと、バレないもん」
いや、もうバレている。
だけど探しには来ないと思う。
仕事が忙しいし、お姉ちゃんのこともあるだろうから。
あたしのことなんてどうでもいいんだよ。
大事なのは会社とお姉ちゃん。
あたしはもう“跡取り”としか見られていないんだから。
「…もう泣いても慰めてやんねぇよ」
「え?」
慶さんに言われて初めて気づいた。
自分の頬に今涙が伝っていることを。
バカだなぁ…あたし。
素直に寂しいって言えない自分が悪いのに。
「ごめんっ…すぐ泣き止むから…っ」
こんなんじゃあ、慶さんに追い出されちゃう。
これ以上、迷惑はかけたくないのに。