少年の手と男の足元にはいつの間にか縄が。


「いよぉっ!」


少年が勢いよく縄を引くと、男が縄に躓いて転ぶ。


そしてあっという間に、少年は男の両足を縄で縛ってしまった。


「ふぅ〜、出来た!」


縛り終わった時のその表情。


実に晴れやかである。


「さ、お兄さん、観念して盗んだお財布出してよ」


「くそっ、このっ‥‥‥」


男は何とか縄を外そうと格闘する。


だがいかんせん、縄はびくともしなかった。


「これ、どうなってんだよ!」


「も〜諦めなよ。縄と格闘してないで早くお財布出してさ〜!」


「くそっ、なん、て固ぇ‥‥‥‥」


「ん〜‥‥‥」


少年は諦めの悪い男を顔を歪めて見つめる。


刹那的、少年の表情が一転した。


鼻歌でも歌いだしそうな表情だ。


「とりゃ!!」


「っで!?」


男は頭に激痛が走り、思わず抑える。


鉄扇子で、少年が男の頭をひっぱたいたのだ。


「この小僧‥‥‥何する‥‥‥ぃっ!?」


男が目を吊り上げて少年に怒鳴ろうとした。


だが、少年の顔を見た瞬間、喉に言葉が突っかかったように声が出なくなった。


少年は笑っていた。


その童顔に似合わない、どこか妖艶な黒い笑みを浮かべていたのだ。