何だか柴田が笹森さんに関してわざと話さないようにしてるような。

でも、あの生真面目な柴田がいくら美女でも会員の保護者と何か不適切な関係になるわけないか。

同じ事を木田も考えていたらしい。
「柴田さん、笹森さんの一人占めはダメですよ~。
あ、でも、もうこっちの店の所属だから、今年の面談は山口さんですよねー。
助っ人の皆さんは今週いっぱいまでだから、僕にも笹森さんと親しくなるチャンスがあるかなぁ」
と言い出した。
こいつ、ちょっと酔っ払ってるな。

でも、確かに来月から始まるジュニアの保護者面談は各店舗でやるから、俺の仕事。

「はっはっは、笹森さんの面談は任せろ」
と柴田の肩を叩くと
「あほか」
と冷たく返された。

「でも、鈴木もユーヤのトレーナーだから仲良しだよな。笹森さんくらいじゃないの?鈴木が気安く話をする保護者って」
と井出が言う。

鈴木さん相手じゃ誰も敵わないと木田が騒ぎ出し、井出が俺が相手なら大丈夫ってことかよと木田の頭をつかんでぐりぐりと攻撃する。

わははっ、もっとやれーとみんなで盛り上がる。

今日の飲み会に鈴木は参加していない。
遅番で閉店までの勤務だからだ。
鈴木がいればもう少し話が聞けたのに…と思って気が付く。
相手は人妻。
柴田じゃなくても会員の保護者と不倫などあり得ない。
なのに、なぜか彼女への興味が尽きない。
真っ直ぐなまなざし。
意志の強そうな顔立ち。
笑うと途端に優しくなる瞳。

中学生会員の母親。
見ているだけなら不倫にもならない。
彼女はうちの店の癒しだ。