ケータイ小説 野いちご

花京院社長と私のナイショな関係

社長の読みどおり、渡社長は地縛霊の土地に不法投棄していた。

渡社長が建設を進めている大型商業施設は元は化学製品を作っていた工場で、そこを更地にする過程で工場が放置したままの溶液が入ったドラム缶や薬品が出てきたらしい。

産廃処理は関連会社の中間処理業者が請け負ったが、化学物質の適切な処理には莫大な費用が掛かることから、廃棄物は社長が所持する山奥に投棄し、帳簿上は適切な処理をしたことにして、儲けを出した。



「篤人くん、見逃してくれ…お願いだ。このことが公になれば…我が社が潰れてしまう」

「無理ですね。違法行為知りながら目をつぶれなど、あなたは俺まで犯罪に巻き込むつもりですか」


至極もっともな意見に望みを絶たれ、渡社長はがくりと項垂れた。太った体が小さくなったように見えて、さっきまでの威勢や偉そうな態度は見る影もない。



「不法投棄をして汚した土地は責任を持って処理をしてください。土地を守る霊の怒りが解ける程度になったことが確認できれば、可能な限りの支援をお約束します」




花京院社長は容赦ないけど、情けもある人だった。





渡社長が土地を元に戻すことを約束すると、地縛霊は色が少し薄くなった状態で渡社長の背後に戻った。

おっさん曰く、この地縛霊は土地が汚くなって追い出された状態になってるので、綺麗な土地に戻れば自然とそこに戻っていくらしい。
そのことを渡社長に伝えると「分かった」と力なく頷いた。
渡社長は会社が倒産しそうなことに頭がいっぱいみたいだけど、地縛霊の呪いが消えれば、体調も仕事も上向きになっていくんじゃないかな。
今後は心を入れ替えて、真っ当な仕事をしてくれることを祈ろう。


ああ、疲れた。


寒い。


体の中が…空っぽになったみたいで動け、ない。



「まどか!」



社長とおっさんの声が遠くで聞こえたような気がしたけど、私はそこで意識を手放した。



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