「どうして彩、あんなに怒ってるの?」
「俺たちがいなくなるのが嫌なんだよ」


 悠が言った。
 それは分かるが、あぁもあからさまに怒ることはないんじゃないか。
 美樹は、彩の感情が理解できない。
 拗ねると機嫌が直るまで時間がかかるから、申し訳ないけどあとは任せたよ、と言い残して、二人は出かけていった。
 簡単にあんな状態の彩を任せられても・・・と、美樹は困惑しながらも二人を見送る。
 二人の姿が消えてから、美樹は彩をどうやってをなだめようかと少し悩んだ。
 こんな時、何を言えばいいのか。


「これは・・・骨が折れそうね」


 美樹は呟く。
 悠は出がけに、あまり店から離れないように、と言っていたが。


「・・・彩?」


 10分ほど悩んでから、美樹は彩の部屋をノックする。
 だが返事はなかった。
 ドアノブに手をかけて、美樹は一瞬、躊躇してしまう。


(そういえば、彩の部屋に入るの、初めてだ)


 あの三人がこっちに来てから、寝る以外は殆んどリビングにいるから、お互いの部屋を行き来するなんてことはなかった。