一瞬シリアスな場面かと思われたが、次の瞬間にさくらが鼻をひくつかせて、気の抜けた顔をしだした。



(さくら)「へ…ヘプチュンッ‼」



なんとも可愛らしいクシャミが、そんな雰囲気を吹き飛ばしたのだった。

さくらは鼻をすすり、場を切り替えるように言い始めた。



(さくら)「ズビビッー…まあ、そんなことが分かったところでどうこうなる訳じゃないんだけどね」



確かにその通りだ。

そんなことが分かったところで「これで元の世界に帰れます」と言うわけではない、

しかし、ついに見つけたのだ、

この相違点は元の世界に帰るためへの、確実で大きな一歩となるだろう。



(勇次)「いやさくら、これは確実な手がかりだ、今はそれを喜ぼう」



(さくら)「その通りね、今までなんの手がかりもなかったんだから、それから考えれば全然マシな方だわ」



さくらは再度気を取り直し、勇次を指差して意気込みあらわに言葉を発した。



(さくら)「勇次‼ この学校徹底的に調べあげるわよ‼」



だがその時だった。

聞覚えのある声が、校内放送から大音量で流れてきた。



-青井ィぃぃ‼ オメェなにやってんだ‼ 仕事始まってんぞさっさと来い‼-



牧場長の声だった。



(さくら)「チッ‼ あのオヤジ…」



(勇次)「バイト呼び出すのに学校の放送使うなよ…」



(さくら)「むうぅ…しょうがないわね… 勇次、私の代わりによく調べときなさいよ‼」



勇次に指差した手を、さらに強調するように上下に振るさくらだったが、

勇次は少し無言に考えた後、ある疑問をさくらに投げ掛けた。



(勇次)「……いや…さくらよ… ここは俺が通ってる学校だから、わざわざ調べる必要はないと思うんだが…」



(さくら)「……」



(勇次)「……」



(さくら)「にゃんと‼」





-初めてのアルバイト 初めての相違点-

終わり。