「優羽ってばっ」


「……あ。光来」


「…………」



優羽がわたしに気付いたのは人波がようやく途切れた頃だった。



むくれたように口をとがらせて、立ち上がった優羽を恨めしげに見上げる。



せっかくお洒落してきたのに、わたしのことなんて全然気付かないんだから……。



子どもみたいに拗ねてみせるわたしに優羽はふわっと笑って、



「制服と全然雰囲気違うな……可愛い」



わたしの髪を優しい手つきで撫でる。



優羽の一言でむくれていたはずの機嫌は嬉しさと恥ずかしさでフカフカと温かくなる。




そのまま髪に触れていた優羽の手がゆっくり下りて、自然とわたしの右手を握った。



ねぇ、優羽……。



わたし……今までの女の子たちに負けてない?



例え一週間だって、わたしは優羽に本気で恋してる。



だから優羽も、今まで一度だってならなかった本気になって欲しいんだ……。



例え一週間でも良いから……。