「こんなの余裕だよ。親は大げさに言ってるけど、普通に生活する分にはなんの問題もないんだ。走ったり激しい運動が出来ないだけで、あとは普通の身体なんだよ」


「でも、」


「俺が大丈夫って言ってるんだから大丈夫。自分の体のことは誰よりも理解してる」



シュウは私の言葉に被せる。


確かに、私はシュウの病気のこと詳しくは知らない。知ってるのは、心臓病で長い間入退院を繰り返してるということだけだ。その病名も、どの程度悪いのかもわからない。

だけど、その病気と長く付き合ってきたシュウなら誰よりも自分の体のことはわかっているはずだし。そもそも私はシュウの言葉を信じるしかない。



「本当に?」


「ああ、ホント。だからサチは俺について来ればいいんだよ。それとも、サチはずっと此処にいたい?」



その問いに、すぐに頭を思いっきり横に振る。


こんなとこ早く出たい。
出来るなら今すぐにでも。



「じゃあ俺と住むのが嫌?」


「そんなわけない‼︎嬉しいよ……凄く嬉しい」



シュウと毎日一緒にいられたら、私はどれだけ幸せなんだろう。

想像するだけで胸が熱くなる。



「よし!じゅあ決まり」



ニカッと白い歯を見せて笑うシュウに私は浮かれて、シュウの病気のことが頭からすっかり消えてしまっていた。



この時、もし私がシュウの嘘に気付いていたら……


ごめんね、シュウ。

私なんかのために、ごめんね……