「あ、あの~瀬ノ内君。私、時間あるから日誌を書くの…手伝おうか?」


急に降ってきた声に顔を上げると、俺の前の席にクラスの女子がニコニコしながら座っていた。


「手伝いは必要ない。俺、自分で書くから。」


ギロリと睨みつけると女子の顔が強張る。


“そっか、ごめんね”と呟いて、逃げるように教室を出て行ってしまった。


全く、俺のご機嫌とって親しくなりたいっていうのが顔に出ていて腹立たしい。


中学の時もそうだ。


傘とハンカチを貸してくれた彼女に恋をして、身だしなみも気にするようになって、髪も短くサッパリさせた。


黒縁メガネも止めて、コンタクトにしてみた。


そしたら、今まで俺を“ダサい”とか言ってた女子たちが、手のひらを返したかのように、今度はキャーキャー言いながら群がってきたんだ。


何様だよ…。


正直、怒りとか呆れでいっぱいだった。


俺は、アンタらのために変わったわけじゃない。


心の中で、そう叫んでる自分がいた。