そんな彼に。

「槙原!」

工場長が叫んだ。

「何やってんだ!勝手に持ち場から離れるな!」

「え…」

槙原は耳を疑う。

「で、でも…」

「テメェいい歳こいて、仕事を何だと思ってんだ!責任感ってもんがねぇのかボケが!」

恫喝にも似た言葉で、槙原を罵倒する工場長。

「でも工場長…俺…子供が生まれて…」

「それがどうした」

耳を穿りながら、工場長は吐き捨てた。

「無事に生まれたんなら帰る必要ねぇだろうが。仕事続けろ」

「そ、そんな…」

初の我が子の誕生。

頑張って出産した妻を労ってやる事さえさせないのか。

そんな槙原の思いも他所に。

「お前の子供が生まれたからって、ウチの工場には1円の得にもなりゃしねぇんだよ」

工場長はそんな台詞を吐いた。