昌磨が、子供を叱るように、めっ、と怒る顔が何故か頭に浮かんだ。

「そんなことになったら、もうショックのあまり、修道院に入るかもしれないから」

 そう言うと、拓海は豪快に笑ったあと、表情を変え、冷たい声で言った。

「それもいいかもな。
 俺のものにならないのなら、修道院にでも入ってろ」

 うう。
 ひどいよ。

「だからさー。
 男の人の、そうやって、豹変するところが嫌いなんだってばー」
と言うと、

「そんなの、俺だけじゃないだろ」
と言う。

「そんな予感がするから、昌磨さんもちょっと怖いんじゃない」

「お前にはわからないかもしれないが。
 それもまた、愛情表現なの。

 なんでも、ああ、いいよ、いいよーなんて流す男は、お前のこと、本当に好きなわけじゃないから」

 そう自分に都合のいいことを言いながら、拓海は放り出していた靴を手に取った。

「ほら、手を止めるな、洗えっ。
 修道院はもっと厳しいぞ!」

 なんかもう勝手に修道院に入ることになってるし、と思いながら、さっき投げたブラシを手に、拓海と並んで洗い出す。

 拓海と肩が触れたが、さっきのキスのあとなのに、思ったほど嫌ではなかった。