「ちょ、ちょっと、父さん。今までボクのことひとりにしておいて、今更保護者もないじゃないか」


そう、ボクは小学校の1年生から高校卒業まで全寮制の学校で過ごしていて、父とともに生活した記憶はほとんどない。
大学に入ってからだって、日本に帰ってこない父の代わりにこの広い家でひとりで生活してたのに……


『いや、だからさ、彼女には「色々」世話になったんだ。駿平、お前も、もう子供じゃないんだから、この「色々」の意味、わかるよな?』


ったく、なぁにが『色々』だよ!
ようは恋人ってことかよっ!


「あのさぁ、父さん、その『色々』とお世話になった人をウチに入れるって、それなりの覚悟で言ってるわけ?」


まさか、父が帰国したら彼女のこと、『新しい母さんだよ』なんて言ったりして。

『いや、全然。彼女が日本での生活拠点ができるまでの援助にすぎん。まぁ、駿平、堅いこと言わないで、上手くやってやれ。もしかしたら、アレコレ色々と教えてくれるかもしれんぞ。グヒヒヒヒ………』


あまりにも腹がたったので何も言わず、ボクは電話を切った。
そんなボクを見て彼女は言った。

「どう?話、理解できた?じゃ、そういうことで、よろしくね、駿平君」


ボクの口から深いため息が、無意識のうちに吐き出されていた。